1885年、大阪の舶来雑貨商人が当時高級品として主に襟巻として使われていたドイツ製タオルを入手、そのやわらかな輪奈(パイル)の手触りに加え、高い吸水性・乾燥の速さという機能面に着目します。それまでの手ぬぐいに代わる新しいものとして日本でも必ず需要が見込めるものになると確信、日根郡佐野村(現・泉佐野市)の白木綿業者、里井圓治郎にその製織の研究を奨めました。圓治郎は研究を重ね苦心の末ついに、筬「おさ」のテリーモーションを利用して輪奈(パイル)をつくる「打出機」を考案、現代の製織方法につながるタオル製織に成功しました。
そしてそのタオルをカルキで晒したことから、初めての日本製タオルである"後晒しタオル"が誕生したのです。晒しの工程をはじめとしてタオルの製造には大量の水が必要で、和泉山脈を水源とする豊富な地下水に恵まれたこのエリアはタオル生産にはぴったりの土地でもあったのです。圓治郎は開発した日本初の国産タオルの製造を近隣の木綿業者へ推奨し、数多くの生産者に広がりをみせていきました。こうして日本で最初のタオル生産地域が誕生、現在に続く泉州タオルはこうして発展していきました。
泉州タオルとは
大阪・泉州から日本全国へ 国産タオル発祥の地
日本三大タオル産地のひとつ「泉州タオル」
百余年の伝統と技術が生んだ日本のタオル。代表的な生産地として「愛媛県の今治タオル」「三重県のおぼろタオル」、そして「大阪府の泉州タオル」が挙げられます。肌ざわりや製法などそれぞれに特徴が異なり、お好みや用途によって使い分けられることもあるでしょう。今回は「泉州タオル」の特徴を紹介します。
泉州タオル(大阪府)
伝統の製法にこだわり“綿”本来の吸水性を活かしたタオル。その特徴は優しい肌触りと何といっても他にはない優れた吸水力です。タオルの製造時に使用する糊やロウの綿の油分を洗い落しているため、一般のタオルよりも繊維の吸水性や通気性が優れておりタオルに最も求められる機能である優れた吸水性を発揮。そのふんわりとした優しい風合いは赤ちゃんや敏感肌の方にも安心して使っていただけるでしょう。泉州タオルのもうひとつの特徴は「後晒し製法」。晒しの作業を先に行う先晒し製法で作られる今治タオルなどと違い、タオルを織る工程の一番最後に漂白・水洗いをして不純物を取り除きます。「さらし」の工程を後にすることで糊や糸の油分などの余計なものを取り除き、糸本来の吸水性を引き出せるのです。そのためおろしたてでも清潔な状態なので水通し不要でそのままご使用いただけます。また、洗濯しても縮みにくいという丈夫な性質も持っています。品質の高さとコストパフォーマンスにも優れていることから、旅館やホテルなどのアメニティでもよく採用されています。タオルの国内生産量の47%が泉州タオル。普段使いはもちろん企業向けの贈答品や店舗の粗品・ノベルティでも数多く流通しています。
沢山の魅力に溢れた泉州エリア
大阪府南西部に位置する泉州エリアは、西北は大阪湾、南は和泉山地に接し、田園地帯にも恵まれた気候温暖な土地です。また、歴史・文化的資源や産業資源、伝統的な祭り、イベント、温泉など魅力ある地域資源が豊富な地域です。
[大阪の台所]
泉州地域は、豊かな水と大地が生み出す山の幸と泉州沖の豊かな漁場でとれた海の幸など新鮮な食材の宝庫で、古くから食にこだわる大阪人の食文化を支えてきました。特産品の水なすや玉ねぎ、キャベツなどの農産物、泉だこやアナゴ、ワタリガニなどの海産物は、泉州を代表する食材で、泉州各地で地元産の旬な食材を生かした美味しい料理を楽しむことができます。[文化と観光]
泉州地域には世界遺産に登録された仁徳天皇陵古墳や、岸和田城をはじめ歴史と文化に彩られた史跡や神社仏閣が多数あります。全国的にも有名な岸和田だんじり祭に代表されるだんじりや、ふとん太鼓やぐらなど地域で継承されてきた伝統の祭も盛んな地域です。歴史的な側面とは対照的に、延べ約500メートルの砂浜、ヤシの木が南国ムード満点の関西最大級のレクリエーション施設「泉南ロングパーク(泉南りんくう公園)」が登場。スポーツ、グルメ、グランピングなど多彩な楽しみ方ができます。関西国際空港の対岸に位置し、飛行機の離着陸を眺めながら楽しめる海水浴場タルイサザンビーチも人気スポットの一つです。一方で美しい浜辺には青く幻想的に輝くウミホタルが生息し、ウミガメが産卵にやって来ることも。
そんな歴史や伝統と現代が交差する場所で「泉州タオル」はつくられています。